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研究

熊本大学 拠点形成研究A「紛争解決学・合意形成学の拠点形成研究」の
メンバーによる研究

※拠点形成研究Aとしての研究以外でも、紛争解決関連研究を含み紹介しています。

伊藤 洋典

平成25年度 紛争解決分野の実践者を米国より招聘し、国際セミナーを開催した。
テーマ “日本におけるコラボレーションの可能性“
東日本震災に伴う問題や九州の大雨等災害後における問題まで多種多様な紛争が発生している。紛争をどうとらえるのか、また、そこから合意形成にいたるまでの手法等を考えながら、諸アクター間の望ましいコラボレーションのあり方について検討していった。
アメリカで行政と市民をつなぐ第3者機関として、多くの成果をあげられている政策協働センターの職員の方をお招きし、事例発表等を通してディスカッションしながら、日本でのコラボレーションの可能性を探った。
カリフォルニア政策協働センター Adam Sutkus
Associate DirectorsDavid Ceppos
平成26年度 米国の大学(カリフォルニア州立大学サクラメント校、デービス校、バークレー校、スタンフォード大学)に出張し、継続的な共同研究の基盤形成の可能性を検討した。
25年度のセミナーでは、災害問題に関して一定の知見を得ることができたが、さらに合意形成という点から見て、課題をさらに普遍化する必要性を感じている。それで、地域課題の解決手法の研究という観点から検討したが、それぞれの経験を確認しながらも、未だ共通の課題を設定するには至っていない。
平成27年度 米国の紛争解決分野の実践者を招聘し、国際シンポジウムを開催する予定。
 

石原 明子

1)紛争解決学・合意形成学の拠点形成研究A その他 国際共同研究
国際的な紛争解決実践の専門家(ファシリテーター)を招いての国際セミナーを連続して開催した。5月には、国連大学の共催で、プロセス指向心理学の創始者であるアーノルド・ミンデル博士によるセミナー、6月には、修復的正義の権威ハワード・ゼア博士の後任であるカール・スタファー博士とキャロリン・スタファー博士、7月には、ナラティブメディエーションの創始者のひとりであるジェラルドモンク博士とスタンレー・シンクレア博士、ディエーションの世界的著者であるジェニファー・ビア博士のセミナーを開催した。これらのセミナーの記録を、出版予定である。
2)科学研究費補助金基盤C(ケア学)
「人間関係のケア学としての紛争解決学の日本における確立のための基盤研究」(平成24年度から平成27年度)
主に欧米で発展させられた紛争変容手法の日本を含む東北アジア圏での適用可能性に関して、導入的な質問紙調査を行った。また、原発災害後の人間関係の分断の変容支援研究に関しては、アクションリサーチの結果のまとめを行い、プロジェクトは下記の科研「原発災害後の人間関係の葛藤の紛争解決学による変容支援研究」に引き継いだ。また、人間関係のケア学としての紛争解決学の手法・分野等別のマッピングとショーケース作成については、多様な紛争解決アプローチを整理する基盤が整理され、来年度に教科書としてまとめる予定である。
3)科学研究費補助金基盤C(震災と人文・社会科学)
「原発災害後の人間関係の葛藤の紛争解決学による変容支援研究」(平成27年度から)
原発災害後の人間関係の分断に対する紛争変容の多様な取り組みについて、5月初旬に国連大学を会場に、その4年間の営みを振り返り、整理検討する研究会を開催した。この成果は来年度に出版の予定である。また、変容支援の一つとしての水俣と福島の交流プロジェクトの効果の評価のためのインタヴュー調査を開始した。
4)日本における紛争変容実践事例研究
水俣のもやい直しの意義について、紛争解決・平和構築学の枠組みからの見直しと再評価の研究プロジェクトを開始した。
[主な業績(2015年度中出版のもの)]
  • 論文(報告書)石原明子、梁びき、岡部勉(協力:奥本京子他)「北東アジア地域の文脈における紛争解決手法の応用可能性に関する研究」熊本大学プロジェクト研究報告書2015
  • 翻訳 石原明子訳 「癒されないトラウマの連鎖サイクル」(Carolyn Yoder. The Little Book of Trauma Healing, Chapter 4) 熊本大学文学部論叢 2015
  • 教科書 石原明子「第6章 個人および集団における対立と協働」『健康支援と社会保障①』 pp.99-107,メディカ出版.2015
  • その他 石原明子「福島と水俣の交流を通じて」 福音宣教2016年4月号(2015年3月発行)

河村 洋子

University of Texas, El Pas, Department of Communication教授であるDr. Arvind SinghalとPositive Deviance (以下、PD)に関連する研究を推進している。

Dr. SinghalとはPDの理論に関するディスカッションのほか、実際にPDを概念あるいは方法論として利活用する上で意見交換をするなど、継続的な交流をしている。2011年に日本学術振興会の研究者招聘事業(短期)を受けて来日していただいたことを契機に、翌年から熊本大学客員教授にご就任いただき、以降毎年来日していただき、熊本、東京、関西圏などでセミナーや講演会を開催し、PDに関する関心と理解の拡大を図ってきた。

Dr. Singhalのご縁から国際的なPDネットワークに加わったことを契機に、現在インドのMudra Institute of Communications, Ahmedabad (以下、 MICA)とタイのChulalongkorn UniversitySchool of Communication ArtsやBoromarajchonnani Buddhachinaraj College of Nursingとの共同研究事業も立ち上がりつつある。さらに、MICAとは2016年1月にPDに関する教育プログラムも協働して企画、実施する。

このほか、エンターテイメント・エデュケーションおよびヘルスコミュニケーションという観点ではDr. Singhal以外でも、University of California, Los AngelsのGlobal Media Center for Social ImpactのディレクターであるMs. Sandra de Castro Buffington、University of Alabama at Birmingham, School of Public Healthの 名誉教授であるDr. Connie Kohler と研究交流している。

その他の研究など

Entertainment-Education(以下、EE)に関して、文部科学省による科学研究費助成を受けて、 EE戦略を用いて青少年の性の健康、HIV/AIDS、若年女性の子宮頸がん検診受診勧奨を目的とするプログラムを制作、実装、評価する研究を展開してきた。さらに、2013年からは厚生労働科研費助成を受けて、EEを発展させたトランスメディアというマーケティング分野では欧米を中心に活用されている戦略に基づき、方法論とその概念を若年ビジネスマンの健康づくりを促すという目的のために具現化、プログラム化し、それを評価するという研究活動に取り組んでいる。

2012年からはPositive Deviance(以下、PD)アプローチを用いて東京都荒川区のがん検診の受診勧奨に取り組んでいる。厚労科研分担研究として参画している御船町の地域包括ケア推進のための協働関係構築や、あるいは産学連携の取り組みのなかで関わりのある熊本市健康まちづくりの中で、Liberating Structures(以下、LS)を活用してその検証をするなどの研究も進めているところである。

葉 陵陵(イエ リンリン)

H26年度 オーストラリア シドニー大学内の The Centre for Asian and Pacific Law(CAPLUS)とThe Australian Network for Japanese Law(ANJeL) と共同研究
 
H27年度 オーストラリア シドニー大学から研究者を招聘し、国際セミナーを開催予定。
「裁判外紛争解決の多様化及び国際化に関する国際セミナー」
本事業は、アジア及びパシフィック諸国における裁判外紛争解決制度の比較研究を通じて、それぞれの制度設計及び手続運営に内包される共通のルールを見出し、より普遍性と柔軟性及び公正性をもつ裁判外紛争解決モデルの形成を探る。今年度はオーストラリア及び日本国内の研究者を招聘して国際セミナーの開催を計画する。
 招聘者は以下のとおり。
  1. 1)Sarah Biddulph教授 The University of Melbourne, law School, Associate Director, Asian Law Centre(オーストラリア)
  2. 2)吉田勇名誉教授 熊本大学(日本)
  3. 3)小佐井良太準教授 愛媛大学(日本)
  4. 4)入江秀晃準教授 九州大学(日本)

森 大輔

John Gastil, E.Pierre Deess, Philip J. Weiser & Cindy Simmons (2010) Jury and Democracy, Oxford University Pressの翻訳(公益財団法人 渋沢栄一財団による助成)

本書は、「陪審は民主主義の学校である」というアレクシ・ド・トクヴィルの言葉に象徴される、陪審とそこで行われる熟議が市民の公共心を涵養するという仮説を、質問紙調査と面接調査によるデータから実証的に裏付けようとする意欲的な著作である。Daniel H. Foote東京大学教授を監訳者として、佐伯昌彦千葉大学准教授、笹倉香奈甲南大学准教授とともに現在、翻訳を行っている(2015年度現在)